第13回 カラーマネージメントシステムってなんですか

【先ずは四方山話】
2004年になり第1回目のデジタルカメラ読本であります。今年もよろしくお願い申し上げます。去年に引きつづき、今年もこのデジカメ読本「とっぷりゆったり」がんばらせて頂きます。もう、別の話題にして、そろそろ本業の印刷に移らんかいとの社内の声にもめげずに、13回目の公開であります。


英語の先生を中心に記念撮影。デジカメの撮影画像をその場でお見せすると、皆さん「オー」とか「ウ~ン」とかおっしゃっていました。このあたりの感嘆詞は万国共通の様です。

さて私事ながら、先日古くからの知合いの女性から、オーストラリアからのお客さんが見えているので、遊びに行きましょうと誘われました。実はこの女性の職業は通訳と英会話の先生だったのですね。
「ぜひに場を盛り上げてちょうだいな」、とのお言葉、「よしゃ任せときぃ」とばかり答えたのは良いのですが、ふと考えてみれば、数多い私のウィークポイントの一つに「語学力」というものがあるのに気が付きました。早い話が英語がまるで駄目。大体が大学受験も英語の点数が他の学科に比べ極端に低いが為に、(いわゆる足切り点)数々の所からお断りの通知。最後に某大学に引っかかったという輝かしい経歴の持ち主なのであります。(情けなや)
そんな訳で不安の中、待ち合せたオールディーズのライブハウスのお店に出かけたのですが、私の場合はどうも口答の会話よりも、手足を使っての形態表現によるコミニュケーションの方が相手に通じるのだという事が分かった次第でございます。
まあ、手話であろうとモールス信号であろうと、はたまた手旗信号であろうとも、要は相手に自分の意志が通じればよろしいので、そこはヒューマンコミュニティの世界、これで国際人の仲間入りだとかなり飛躍した勝手な解釈をしてまいりました。

 さて地球上の人々の言語様々で意志疎通が図れないのは、旧約聖書によると思い上がった人々が「バベルの塔」を築いた時に神の怒りにふれたからだそうです。
 30数億の人間が住む地球に何種類の言語が存在するのか存じませんが、言葉が違う事で意志疎通が図れないのでは、国際会議もできませんから通訳を通して行ないますよね。
 実際上、今は英語が共通言語として役割が大きのでしょうか。

【コンピュータ同士のコミュニケーション】
 コンピュータの世界でも“Windows”や“Macintosh”など色々なOSがあり、コンピュータ自体をOSというプログラムで動かします。データを違うOSのコンピュータに渡す時は、コンバートソフトを利用して行なうのですね。昔は“AppleExchenge”などを使用して「MS-DOS」パソコンから“Macintosh”に移動するなどしてましたが、最近結構データの共有しやすい環境になりネットのインフラも進み“Windows”や“Macintosh”もあまり意識せずに済むようになりました。また共有して使用出来る書体(OpenTypeと言います)も普及しつつあります。しかし、以前はワープロからの文章を「MS-DOS」パソコンに持っていく場合は、必ずワープロコンバータなるものが必要でした。人で言うと通訳ですね。しかしながらこの通訳さん、“NEC”や“富士通”などメーカー毎に違うので、いちいち買わなくてはいけなかったのですね。人間でもドイツ語通訳イタリー語通訳と人が違いますが。でも最後は“どんなメーカーでも変換します”という変換テーブルを持った通訳さんが現れて終止符となりました。
 どんなもんでも「Dos恋(どすこい)」、というお相撲さんみたいなふざけた名前のコンバータソフトでしたが、これ便利でだいぶ助かりましたよ。“もっと早よぅでてくれとりゃよかったによぅ”、と正直なコメントです

 

【さて色の世界では】
 今述べたように、文章の場合は文字コードがそれぞれのコンピュータOSにより異なる場合、或いは文字を持っていない、認識してない場合は違ってしまいます。“Windows”で作成した文章が“Macintosh”で見ると正確な文字で出てこない場合があるのです。これを我々専門業者の間では「文字化け」と言っております。(しかしながら変な単語)
 これは文字ファイルでのお話でした。色の世界でも文章とは毛色の異なる内容ではありますが、似たような事が起こります。
 前回12回号でも述べましたが、同じデータを違う媒体で出力や表示をしますと、勝手気ままな色で出てきます。「インキジェットや静電プリンター、印刷やDPEでのプリント、モニター、同じ出力方式でもメーカーや印刷屋さんによっても色がまちまちで揃いません!」と言う事です。もちろんコンピュータのOSによっても色表現は異なるのです。
 これはそうですね、同じ日本語でも地方での“方言”みたいな感じでしょうか。文字のように“文字化け”で全く意味が違ってしまう様な事ではありませんが。まあ言葉(色)は理解できるが、方言(プリント)では感じが違うなぁ。そんなニュアンスでしょうか。で、「おいら江戸っ子だから関西弁は嫌れェでェ」とか東北弁で恥ずかしがる人や、はたまた「女性の京都弁って良いなあ」と思うなど…、その評価には感情も入りますね。それぞれ方言に親しみや好みはあるでしょうが、日本標準語(画像元データ)のボイス(色評価)としては、ずれているのですよ。

 さあここで文字のお話ではありませんが、通訳さんのご登場となります。
 通訳さんというより、ここではNHKのアナウンサーでしょうか。このアナウンサーによってニュースの原稿(画像データ)を正確に読み上げます。暗い事件も明るいトピックス(暗い写真、明るい写真)も正直に伝えます。
 またTVで方言のある地方に行きインタビューをしたとします、標準語で相手と会話をして、正確に読み上げたり、方言を標準語にして伝えたりしますが、これを画像で言うと「カラーマネージメントシステム」(CMS)という事になるのです。
 ではこのアナウンサーはどこの誰でしょうか。
 文字での通訳は「どす恋」をはじめとした単独のコンバータソフトです。画像の場合、アナウンサーの「カラーマネージメントシステム」(CMS)は単独のアプリケーションソフトよりもどちらかというと、コンピュータ基本OSにゆだねているといった方がよろしいのです。フリーのアナウンサーではなく、所属は“NHK”といういう事と同じですね。つまりは“WindowsOS”や“MacintoshOS”がこれに当ります。
 “Windows”には「ICM」、“Macintosh”の場合は「ColorSync」というプログラムが基本OSの中にすでに入っており、設定を正確にさえすれば、これらが働きモニターの色やプリンタでの出力を元画像データから合せ揃えて出力するのです。

【カラーマネージメントシステム(CMS)を使った場合と使わない場合では】
 ここで、前回12回での(図-1)で述べた事を、もう一度モニターや色々なプリンタ、印刷機により、色が揃わないという内容をおさらいしてみましょう。
 デジタル画像データを人の目が感知できる自然の「色」を「印刷物」として見るためには、モニターを始めとしたプリンタなどの出力装置を介して表示する事になります。これら出力装置をデバイスといいます。実はモニターもプリンタなどと同じ出力装置でして、デバイスの一種なのです。

 A図)は“CMS”を使用しない場合を描きました。
 被写体はデジタルカメラの場合撮像素子(CCD、CMOS)でデジタル画像データに、銀塩カメラの場合はフィルムをスキャナでそれぞれデータ化し、パソコンで見る場合はディスプレイモニターで、紙にして見る場合はプリンタ出力を行ないます。この場合それぞれのデバイス(出力装置)での発色の仕組は異なるため、表示した色はそのデバイスにより違った色に見えてしまいます。

 今度は“CMS”を使用した場合をB図)に描きました。
 それぞれのデバイス(出力装置)は固有の発色傾向を持つ為に、一度デバイスに依存しない色信号(色空間)の数値に書き直し、これにて制御、見た目での色の差を補整していきます。これがカラーマネージメントシステム(CMS)です。デバイスに依存しない数値化された色空間は絶対的な値で「デバイスインディペントカラー」と言います。
 このように入力からの色信号は「デバイスインディペントカラー」に置き換えるのですが、ここで各デバイス固有の色再現を把握した「ICCプロファイル」というファイルを利用して出力時の特性を補整して行きます。C図)
 これを操る「CMS」が「ICM」や「ColorSync」です。
 またマネージメントする物は出力系だけではなく、B図)のスキャナなどの入力機(場合によってはデジタルカメラ)も制御の対象になります。スキャナも同じ原稿をスキャンしても、機種により個性があって色に差が出るようです。

【ICCプロファイル】
 前回12回での(図-1)でも出てきたモニタープロファイルとかプリンタプロファイル、または「ICCプロファイル」とは一体なんでしょうか。
 プロファイル:日本語にすればプロフィール。横顔とか顔の輪郭              という事になるのでしょうか。ここではデジタル画像データをプリントやモニターで表現した時の、その機材の持っている癖のような物を数値化したデータファイルの事です。この人はアジア人だけど、米国国籍で英語しかしゃべれませんよ。だから話す時は英語で会話して下さい。という一種の名刺や認識票みたいな物ですね。
 このプリンタではこのような色で出ますからというその個性を事細かに示し、なお且つ記入したた内容を直ぐに公開できる様になっています。この公開内容は一般公開と、ごく限られた部門でしか内容が分からないものとがあります。一般に汎用できるものは「ICCプロファイル」と言います。“ICC”とは、「International  Color Consortiumi=国際カラー・コンソーシアム」という意味で、国際照明委員会の定めた規格に基づいて記述されているものです。つまりオープンでベンダーに依存せず、クロスプラットホームで利用できるような規格になっているようです。どんなOSでも、どんな使用するアプリケーションやドライバーでも解読可能なのです。一方解読できない物は、ある固有のメーカー等が単独で開発したシステムや機材の中にあるもので、あまり見かける事はないと思います。
 この「ICCプロファイル」を受け取り読む込む事で、個性ある出力機でも「CMS」は本来データの持っている色を正直に出す事ができます。逆に「ICCプロファイル」の精度が悪かったり、適切でない物を設定すると、とんでもない色になって見えてしまします。

【ICCプロファイルを作成する】
 「ICCプロファイル」はどうやって作成するのでしょうか。
前回12回ではモニターを標準化する方法を紹介しましたが、これもちゃんと「ICCプロファイル」を作成しています。この時はモニターを目視で行なう方法(目視の方法リンク)と、キャリブレーターという機械で行なう方法を取り上げました。制度的には専用測定器を使用したものの方が、標準化精度は高いのはもちろんです。
 さて次にプリンタや印刷物のプロファイルですが、インキジェットプリンタなどでは、購入時に、あるいはメーカーのWebで供給された物を使えば、まずは良いのではと思います。ただ最近のプリンタは結構安定しているのですが、私が使用している古~いプリンタなど(このプリンタ必ず年賀状作成時期になると調子が悪くなり、修理に出すとお正月開けに戻ってくる)、ある程度標準からずれているのではとも思いますし、純正ペーパーは高いから嫌だという方は、やはり出力されたプリントを測色し専用ソフトとパソコンを使って作成します。印刷物やレーザープリンタのDPEのデジタルプリントからでも同じです。
注)DPE店のデジタルプリントは一般的に自動修整がかかっておりますので、必ずしも撮影画像に忠実ではありません。ですから自動補整をOFFにしてもらってからでないと、正確な[ICCプロファイル]は出来ません。

 測定器やアプリケーションソフトはピンキリでして、安い物では測定器込みで十数万円位から200万以上するスイス製の物まで様々です。我々のような生産工場で使用するには、最終品質に影響しますのでそこそこの精度を必要とします。いずれにしても一般家庭用ではありませんね。

プロファイル作成ツール各社製品
写1)グレタグマクベスとモナコのカラーチャートパッチ測定ターゲットにする
写3)プロファイル作成アプリケーションのメニュー画面

 右の写真(写1)はプロファイルを作成する為の色々なチャートですが、これをプリンタ出力や印刷を行い、その後測定をし各設定値を埋め込んでデータを作成します。プロファイルは一種の変換テーブルですから、チャートのブロック状のパッチの理論色と実際の出力色のギャップをうめる為の測色です。色数も500色~1500色以上あるチャートもあり、なかなか大変なのであります。また印刷にしても不安定で、刷るたびに色が変わる様な印刷物からはやはり正確な「ICCプロファイル」は作成できません。

写2)印刷プリントしたチャートを測定、中にはプロッタでの自動測定もある

 「ICCプロファイル」を本格的に作るというのは、専用の機器を使ったり、測定されるプリント側の方も年中変動したりせず、それなりに安定したプリントが条件など、なかなか簡単な事ではないのですよ。じゃあプロの現場ではいったいこの「ICCプロファイル」をどのようにして使っているのでしょうか。ここはまた次回のお話と言う事にいたしましょう。

またまた新製品の紹介でございます。
 え~今回はデジカメの紹介にあらず、してなんの製品?
 カメラからデータをモニターで見て「あっぁ~、なんだこれは!」とがっくりし、わらをも掴みたい気持ちになった時、思わず涙が出てくるような商品名の画像処理ソフト。その名もズバリ
 「ピンぼけ・手ぶれレスキュー」!
 説明はいりませんよね。ピントの外れたりブレたりした撮影後の画像を、ピントが合ったように見せてこの写真を救っちゃおうという、なんとも情け深い仏さまみたいな画像処理ソフトなのです。
 カメラには手ぶれ防止機構の備え付けられている物があり、撮影時にできるだけ条件よく絵をデータ化する物もありますが、これはカメラとは関係ない全くの後処理で、windowsマシン上で動くアプリケーションソフトです。
 値段はパッケージ版で4,800円と個人レベルで買えるお値段、詳しくはこちらをご覧になって下さい。
http://www.corpus.co.jp/

 早速あわて丸の私くしめ、しめしめとばかりお試し版で試してみました。しかし使用方法がいまいち慣れていない為か、仏さまと言う程ではありませんでしたが、内容によっては文字どおり非常用に救える事もあるかも知れません。また、通常使うPhotoshopの貧弱なシャープネスフィルタから比べると、色々な効果を持つパラメータがあり、シャープネスの工夫による表現はなにか期待できそうですね。ちょっと使いこなすには時間がかかるかも知れませんが、私達印刷屋さんにとっては、カメラマンと違い撮影元データがない状態で入稿してきますから、その分修正する範囲にも限界がある訳です。そこでこのような物で写真をよく見せる事できればと思うのは当然なのです。
 ところで当社のカメラマン氏曰く「うぬ、こりゃぁプロにゃぁ必要無いソフトだなぁ」、一方もうひと方のカメラマン氏、「もしこのソフトほんまもんなら、いざと言う時には助かるなぁ」だって。
 助かるなぁと言ったカメラマン、最近ロケが条件の超悪い撮影でして、その上厳しい御注文お仕事を後処理で補っていて、かなりお疲れぎみだったのです。同じ忙しい撮影をなさっているお二人ですが、片やスタジオ、片や条件の悪いロケ撮影と、状況によっては意見も変わるものでございます。でもプロのカメラマンってほんと体力勝負なんですよ。ご苦労さまです。


撮影のまま(ピンぼけ)
いきなりシャッターを押すとご覧のようにピントが合う前に写ってしまいます。
撮影時はシャッターボタンは半押しで構え、
ここぞという時に軽く静かに押しましょう。

ピンぼけ・手ぶれレスキューで補正後
フェイドというフィルターを使って補正してみました。ピンの甘さが若干よくなっているのが確認できますか
 

撮影のまま(ピンぼけ)

ピンぼけ・手ぶれレスキューで補正後

 さて今回はいつも以上に分かりにくいカラーマネージメントお話。最後までおつき合いいただきありがとうございました。