第9回 デジカメが嫌になる暗~いお話 3

皆さんこんにちは、新緑の季節から日本列島は梅雨に入ろうかというこの時期、いかがお過ごしでしょうか。
さて、今回もしつこく「デジカメの嫌になる暗~いお話PART3」と行きますが、デジカメの欠点を突つくのはこれが最後という事にいたしたいと思います。
では行ってみましょう。

(いやなところその九)
【夕日を撮ったけど夕日っぽく写らない】
夕日の撮影では先ずは場所を決め、そして日時を決め、天気予報で天候の状態を良く把握し、寒い時はそれなりの防寒の準備を、真夏の暑い海では少々体が濡れても良いように、地形の険しい場所では転んで大事なカメラを壊さぬように動きやすい格好で、とまあここまで用意周到しなくてもとは思いますが、 いかんせん太陽が同じ気候で同じ位置に落ちるのは年一回、となると失敗した日にゃまた一年待たねばと思うとつい気合が入るものでごわす。
(こんな几帳面さ私じゃございません。別の方です。)
とまぁ思い入れはともかく、夕焼け空に向かってデジタルカメラを向け写真を撮りますと、 それなりに写ってはおります。(夕焼け1)

デジカメ通常撮影の場合(夕焼け1)
35mm銀塩フィルム撮影の場合(夕焼け2)

デジカメ露出補正し撮影(夕焼け3)
ホワイトバランス設定の違い

オートホワイトバランスの場合(夕焼け4)

ホワイトバランスをプリセット
設定にした場合(夕焼け5)

ここで35mm判フィルムで撮影したものと比較してみましょう。(夕焼け2)
同じ時間に撮影したのですがどうでしょうフィルムの方が、夕焼けらしく表現豊かに撮 影されていると思いませんか。 フィルムには今までの長きに渡ってのノウハウが積み込 まれているのか、夕焼けは赤いのだという人間のイメージをうまく表現しているので しょう。使用フィルムはディーライトタイプで地味な発色の“SINBI”を使用、“ベルビア”の様に特別鮮やかのものではありませんし、使用カメラの“EOS-10”ではオート撮影そのものです。 一方デジカメですが、恐らく風景の色は忠実に再現しているのでしょう。でも人の気持 ちまではまだプログラムの中に反映しきれていないといった感じですね。

それどころか、ホワイトバランス等をオートに設定しておくと、中途半端な光は色カブ リとしてとらえ、勝手に白くしてしまうかも知れません。フィルムではホワイトバラン スを変える事はできませんから、かえって変動要因が無いと言えます。 この当りは撮影側でのコントロールが必要になります。

(夕焼け3)ですがこれはマイナスに露出補整をして撮影しています。これにより夕焼け空の感じをより強くしました。太陽光が直接レンズに入るような場合はオート撮影で画面を動かすと、露出が変ってきますので(特にスポット測光など)、良いと思うところでシャッターを半押し状態にしてAEロックをし、露出を固定、それから構図を決めましょう。すばやくやらないと、夕日って奴は結構速く動くので、あっという間に沈んでしまい、ハイまた次の日という事もになりかねません。

先ほどホワイトバランスの事に触れましたが、機種によっては夕日モードという物がある場合は、これを使用しましょう。夕日が白っぽくなるような事はありません。いわば夕日専用フィルムの様なものですね。オートの場合は対象となる太陽の光源自身をホワイトにしようとするので、プリセットを使いホワイトバランスを固定する事も一つの手法です。 (夕焼け4)と(夕焼け5)はデジタルズームを使用して撮影したので絵が荒れていますが、(夕焼け4)がオートホワイトバランス撮影、(夕焼け5)が別の時刻に白紙でプリセットホワイトバランスを取り、このホワイトバランスにて撮影したものです。他は一切変更しておりませんが、結構違うものですね。

《余談》
毎日拝める朝日と夕日は(新聞の話じゃない)
照明や太陽には色温度があり、色温度が高ければ青っぽく低ければ赤っぽくなります。朝焼け写真は、昼間の日光より色温度が低い為に空が赤く見えるのだそうです。また太陽光を波長で表わすと太陽が地平線ぎりぎりになる夕方は、光の入射角がが浅くなります。波長の短い青い光は波長の長い赤い光より屈折散乱しやすいため、青い光は散乱してしまい。我々の目に届く光は赤味の光が多く、よって夕日が赤く見える事になります。(学校の先生が30年前に教えてくれた)ところで朝日と夕日では微妙に赤みが違うように思えますがいかがでしょうか。

朝焼けの方が写真より白っぽく眩しく、夕日の方がオレンジ色の鮮やかな感じを受けます。実際はどちらもそれ程変らないでしょうが、人のイメージの中での感性がそう思わせているようなのです。ただ、朝の方がチリホコリも少なく酸素量も多い。夕刻は地表温度が朝に比べ高いなどの事から微妙に光の屈折率等に影響しているのではとも思います。
(今度スタジオのカラーメーターで計ってみようと思ってから数ヶ月、実行できないのは朝寝坊を克服できない私の気力の無さが原因です。)

夕方になるとなぜ太陽は赤くなるの?

青い波長の光は赤い波長の光に比べ屈折率が高く散乱しやすい。光の入射角がきつくなる夕刻には赤い光しか地表に届かない。

(いやなところその十)
【友人が一眼レフデジタルカメラの受光面にゴミが入ったと言って騒いでいた】
私の友人で昔からのカメラ好きがおりまして、1年ほど前にデジタル一眼レフを購入したと見せびらかしに来ました。が、最近になってゴミ取りだ、ゴミ取りだと騒ぎはじめました。うむ、公園の掃除でもボランティアでやっとるのかい、感心だねぇと思いきや、何のことはない、彼の愛機のCCDにゴミが付着してそれが撮影画像に写ってしまい、後の画像処理で消去しているとの事でした。レンズの絞りをどうも絞ると同じ場所に出てくるとの事です。「そりゃ大変、買い替えたら」と申し上げましたところ。簡単に言うなと、目を向いて怒りはじめました。


Canon Eos-1Dsのレンズマウント部
フィルムタイプの一眼レフなら屋外ででもレンズ交換をするが、デジカメでは絶対に嫌!。極力屋外撮影にはその撮影をカバーできるズームを最初から付けていく事が望ましい。

レンズを外せばミラーが見えその奥にシャッター、さらにその奥に受光素子が!銀塩一眼レフと構造的に何も変わらないのに、ミラーボックス内に侵入する汚れがデジカメは大嫌いなのです。

一般コンパクトカメラはレンズ固定でCCDが外気に触れる事はありませんが、一眼レフになると銀塩タイプもデジタルタイプもレンズ交換が出来ます。その撮像交換レンズを通した光学ファインダーが魅力なのですが、このレンズ交換の際に空中のゴミホコリがミラーボックス内に混入する事が大変な問題なのです。露光時に跳ね上がるミラーでボックス内の空気をかき回し、シャッターが開いた瞬間、CCD等撮像素子面にゴミが付着してしまうようです。これが影として写り込んでしまいます。フィルムと違い撮像素子は固定ですから、気を付けないと徐々に汚れてくるので始末が悪いですよね。絞りを絞り込めば込むほど、はっきり浮かび上がってきまして、たまたまF22などで撮った時に始めて気がつくといったあんばいです。
そんなのブロアーで吹き飛ばせば、とお思いでしょうが、絞り込んで出てくるゴミはかなり小さく、メーカーでクリーニングしてもらわないと素人では無理。フジのS2Pro等はCCDクリーニング法が“取り説”に記載されているようですが、傷がつく事を考えると、とても恐くて拭く事なんか出来ませんね。(メーカークリーニングは時間がかかるらしい)
会社のスタジオで3年ほど前、“KodakのDCS660”というカメラを購入した時、(当時ボディー価格ウン百万円だった)わたくし早速、野次馬根性むき出しで「CCDはどこだぁ」とレンズを外そうとしたところ、「あぁ~だめ、不潔な人は触らないで、それからウッカリ落すと高級車壁にぶつけるようなものだよ。なんたって太田原さんのポンコツ“パルサー”10台は買える値段なんだから。」
ふん失礼な、私の愛車を対象にだすなてんだ。

(いやなところその十一)
【デジカメの一眼レフファインダーってなぜあんなに小さいの】
デジタルカメラの一眼レフのファインダー覗いた事ありますか。35mmのフィルムカメラのそれに比べ、黒い部分が多く視野がやたら狭いと思いませんか。そうこれは“CanonEOS-1Ds”“KodakPro14n”などフルサイズ一眼デジカメは別にして、ほとんどのカメラのCCD撮像素子は35mmより小さい。(APSサイズ前後)そこへ持ってきて35mm判カメラのファインダー設計をそのまま転用している事が多く、結果として35mm枠の中で小さく表示がされてしまう事になってしまう訳です。中には“EOS-1D”の様にファインダー部をデジカメ専用設計にして、見やすいようにしているものもありますが、ボディ価格が20~30万クラスではファインダーを覗いた時の視野の狭さは、ぐっと我慢してその機種になれるようにしましょうね。

F80のボディを流用したフジFinePixS2Pro

銀塩カメラ ニコンF80

フジFinePixS2Proのファインダーを覗いたところ。視野が狭い。


フジFinePixS2Proと同じボディーの銀塩一眼レフ ニコンF80のファインダーを覗いたところ。
報道スポーツ関係で使用される事を考えたCanon Eos-1Dは高価な分、ファインダーを覗いた時の視界は広い。

(いやなところその十二)
【背景をぼかしたいけどなかなかボケない】
ポートレート写真などモデルさんにピントを合せ背景をぼかして、女性を引き立たせる事は良くやりますね。35mmスチルカメラでは85mm~150mm位の明るいレンズを使う事が多いのでしょうか。ところがデジタルカメラではこのバックを“ボカス”のに苦労するケースが多いようです。これは35mm一眼レフの場合24×36mmというサイズなのに対し、一眼レフデジタルカメラの撮像面積はAPSサイズクラスで、準広角35mmが標準レンズになってしまいます。ご存知のように背景を“ボカス”という事は被写界深度を浅くする事、こうするにはレンズが明るく焦点距離が長くならなくてはならないのに、APSサイズレベルのカメラでは、被写界深度の深いレンズがどうしてもメインになり、結果的に“背景がぼけにくい”という事になります。
一眼レフデジタルカメラでこのレベルですから、一般コンパクトカメラではレンズを見ると大体、焦点距離f7、8mm~20、30mm位のズームレンズ、明るさもF2.0~F3.○○位で、とても35mmスチルカメラのレンズには程遠い代物です。
こんなことでデジカメでは撮影時に出来るだけ望遠よりで、シャッタースピードを上げ絞りを開放近くにしてがんばり、それ以上はあきらめるしかなさそうです。
どうしても不満とおっしゃる方は、パソコン上の画像処理で“ボカス”、或いは高価格な「KodakDCS14n」「コンタックス Ndigital」「Canon EOS1Ds」等の35mmフルサイズ一眼デジタルカメラを購入という事になります。合掌……。

Contax N digital
35mm判フルサイズのCCDを搭載する。

レンズが長焦点で口径が大きい方がピントの合う範囲は狭くなる。55mmレンズでは人物の赤い光束線はピントが合っており、背景の木の青い光束はフィルム上では結合せずピントはぼける。
一方35mmレンズでは両方の光束線は共に近いレベルで結ばれてピントは大体合っている。デジタルカメラの場合銀塩フィルムより撮影サイズが小さい物が多いのでレンズの焦点距離は小さく、その分被写界深度は深くなりバックがぼけにくい。

(いやなところその十三)
【パララックスで失敗した】(デジカメだけじゃないよ)
一眼レフ”ユーズオンリーの人はあまり気にしませんが、近接撮影をした所ファインダーで見た時より、実際に写っているものが切れていたなんて経験ありませんか。
これは「パララックス」と言って、撮影レンズとファインダーレンズが分かれている場合、撮影で写る範囲とファインダーで見える範囲角度に違いが生じ、これによって起こる視差の事です。当然遠方でなく、近い方がその現象が起きます。
これはデジタルカメラに限った事でなく銀塩でも同じ事。嫌、むしろコンパクトデジタルカメラの方が液晶モニターを使用していれば、撮影レンズでの画像を表示しているので気にしなくても良いのです。じゃあなぜここに載せんのよ。
あ~それは紙面をかせぐためー。じゃぁなくって。えーつまりデジタルカメラの撮影時に、屋外での液晶モニターでは頼れない時など、小さなビューファインダーを使って撮影したとします、その時つい「パララックス」を頭に入れずに写す時があるからなのです。普段は視差の事なんか気にしてませんものね。レンジファインダー専用の高級カメラ“コンタックスG2”や“ライカM7”等はパララックス自動補整付きですが、コンパクトデジタルカメラのビューファインダーはあくまで補助使用、それ程お金はかかっておらずズーム機能が精一杯なんですね。だから接写でビューファインダーを使用する時などはそんな事をちょっと気にしましょう。

(写真7)は液晶ファインダーで撮影した場合、それに対し(写真8)はサブのビューファインダーを見てそれをだけを信用して撮影した場合です。
もちろん一眼レフでは、デジタル、銀塩とわずこのような現象はありません。(写真9)

(写真7)
コンパクトカメラで液晶ファインダーを使い撮影。CCDからの画像をそのままファインダーに写し出すので、撮影写真に誤差は少ない。
(写真8)
コンパクトカメラで光学式ビューファインダーのみを使い撮影。白い花がケラレてしまった。
(写真9)
一眼レフカメラでの撮影、視差はない、ただし35mmフィルム全てをファインダー上に表示しない機種が多い。
視野率○○%という数値がカタログ上に掲載されている
撮影レンズとビューファインダーには、各々位置にちょっと差がある。これがパララックスの要因となる。
撮影レンズとビューファインダの位置による視差
img01
Contax G2
レンジファインダー型の35mmフォーカルプレン銀塩カメラとしては最高級レベル。16mmから90mmのツファイス交換レンズが魅力。

さてさて3回にわたりデジタルカメラの悪いところを言いたいほうだいしゃべってまいりましたが、結論としては欠点は日々直っていくものだ、デジタル産業の進化は実に速いもの。欠点、裏返せば利点と成りにけり、昨日の欠点今日はなんぞや、なのであります。
ただデジタルカメラの特徴はそれぞれ把握しておきましょう。 では次回もよろしくお願いいたします。