第4回 デジタルカメラの構造 2

さてさて今回も引き続き、デジタルカメラのしくみについてお話していきたいと思います。この前は“アマチュア機(コンシューマ機)とプロ機(プロシューマ機)では一般的には画素数が同じであっても、セルサイズがプロ機の方が大きいのだ” “だから画像品質もその分よいのだ”というところで終わりました。
ですから、もう少しこの当り突っ込んだところからはじめましょう

(じゃあアマチュア機はプロ機と比べてどうなのか!)

アマチュア向け一般コンシューマ機は、このように小型サイズのCCDを使用していますが、それはそれで一般ユーザーに受け入れられる、使用目的に合った設計がなされています。それなりの特徴をつかんで評価して下さい。

A)一眼レフタイプとコンシューマ機のレンズ焦点距離の違い

1) 右図はレンズ交換型一眼レフタイプと、2/3インチCCDを備えた一般コンシューマ機の焦点距離を表わした図です。長辺23mmのCCDの一眼レフでは標準が30mm位、2/3インチCCDカメラの焦点距離は11mmです。という事は小さなCCDを使用したコンシューマ機は小さなレンズで済むという事です。望遠効果の高く明るい(F値)ズームレンズなどカメラボディに装着する事も容易になります。これによりカメラボディの小型軽量化につながります。
またCCDの小型化は省電力なので、長時間の使用面でも有利。感度だって一般撮影に支障のないレベルで、高画素が実現できるようになってきました。
これらは、コスト面に反映されてきます。オリジナル設計でない同一メーカーのCCDを使用する理由も、この当りを考慮しての事と思います。
おかげでずいぶん手軽に、使いやすい小型カメラを私たちは持てるようになりました。

2)コンシューマ機のもう一つ有利な点は、CCDに合わせたレンズ設計ができるという事です。
下図を見てください。撮影レンズは何枚かの凹凸レンズで構成されていますが、レンズ群の最終レンズから撮像面までの距離をバックフォーカスといいます。一眼レフでは、ミラーがあるので広角短焦点レンズでも、バックフォーカス距離は一定になるように設計されてます。また元々35mmフィルム用なのでCCDには関係無い周辺部も、収差などを押さえ画質が落ちない様に作られています。
レンズを通った光線はある角度を持って受光面に入ります。しかしここでCCDの性格上光の侵入角度は、できるだけ面に垂直の方が効率よいのです。この事を「テレセントリック性」が高いと言います。
でも汎用レンズはそんな設計がされておりませんから、またしたくてもレンズ本体が長くなり、設計にも無理がかかります。レンズにとってはフィルムよりCCDの方が分が悪い事になります。
その点コンシューマ機はレンズ交換もしないし、レンズ自体自分のカメラしか使用しません。ですからCCD専用の「テレセントリック性」の高いレンズ設計をする事により、よりCCDの性能を引出す事ができるのです。

35mmカメラを対象とした1眼レフタイプは、CCDへの光入射角度が大きいのに対し、デジカメ専用レンズのコンシューマ機はCCDへの入射角度が垂直に近く理想的
最新情報補足です
前回のデジカメ読本第3回でもの受光CCDの事は書きましたが、プロ用一眼レフタイプはフィルム一眼レフとレンズなどシステムを統一するために、ほとんど機械構造は同一です。しかし一部最新フルサイズカメラを除き、CCD寸法はフィルムより小さく、実際にはデジタルカメラだけで考えれば、レンズボディともこのような大きさのものは必要無いのです。
ところが今回「オリンパス」&「コダック」よりデジカメ専用レンズ交換式一眼レフの統一規格を発表されました(フジフィルムからも賛同の意向有り)。「フォー・サーズ」というそうです。
つまりCCD受光面寸法も、交換レンズマウントの標準規格とし、メーカー間の互換性を高くし、なおかつデジカメレンズ交換式一眼レフの小型設計が出来るというのが、このメリットです。
今後。好みのレンズ、ボディをメーカーの選択自由に、コンパクトな物を購入できる日も近いかも知れません。今後の動向に期待しましょう。
今年の初頭登場した「ミノルタディマージュX」、デザインがユニークで話題になりましたが、中身を見るとレンズが縦に配置されているのですね。これなどもテレセントリック性を高くする事と薄型ボディを両立させた一例です。


ミノルタディマージュXの前面図
ミノルタディマージュXの透視図
薄い平台状のボディ右側の縦型に置かれている光学系。入光部は右上端に見える。

薄型ボディを横から見たもの。
前面から来た光を90度下に向け、ボディ底部のCCDに導く。これで3倍ズームのレンズ群もスペースのじゃまにならないユニークな設計

毎度お馴染み太田原めのちょっと一言
ただしこれらの一般コンシューマ向けカメラのメリットは、受光面が小さいからできることです。 ところで小さなレンズを製造するのは、許容誤差も厳しくしなくてはならず、それなりに製作技術も高度になるという事も付け加えておきます。

図は「NikonCoolpix」1/2CCD搭載機のレンズ構成です。結構複雑でしょ。

C)Nikon Coolpixのレンズ構成図

表D)はCCD用レンズの解像度要求度を表わした物
APS-Cサイズの一眼レフと1/2サイズコンシューマ向けCCDが要求する、レンズに対して要求するレンズ解像度です。各画素数ごとに、この程度の精度は必要であるという数字です。レンズメーカーはMTFとか、OTFなどという関数で表したりするそうです。 実は大型一眼レフよりも小型コンシューマ機レンズの方が、mm当りの解像本数は多く、より高解像度でシビアな設計製造が要求されます。
D)CCD画素数と必要なレンズ解像度(要求値)
有効画素数
APS-CサイズCCD
1/2型サイズCCD
300万画素
44本/mm
125本/mm
400万画素
51本/mm
144本/mm
600万画素
62本/mm
176本/mm
800万画素
72本/mm
204本/mm
1000万画素
80本/mm
228本/mm

【またまた脱線太田原氏】
ところで話は180度変わりまして、いきなりデジタルからクラッシクなお話しに移ってしまうという一席。珍道中の様相を見せ始めた太田原めであります。早い話がちょっと“だっせん”でなのであります。
ふる~い昔のライカ、コンタックスを代表するレンジファインダー型のカメラ。(レトロだレトロ) これは一眼レフの様にミラーが無いからバックフォーカスを気にせずレンズ設計出来ます。レンズ構成もシンプルにでき、今のようにコンピュータが無い時代でも、小型で性能の良いレンズを製作できたのではないかと想像できます。自宅にあった”ライカIIIf”写り良かったですよ。
ついでだからミラーが無いのでシャッター音も静か、もちろんシャッターを切った瞬間のタイムラグ、一眼レフよりは有利でしたよ。しかもプリズムが無いから軽い。ロバートキャパも一眼レフ持たなかったですものね。(もっとも当時は一眼レフの商品化された物は少なく未完だった。)
望遠なんてぜいたくいわなきゃ、速写性抜群。スナップ撮影には持ってこい。今でもこのレンジファインダーの新しいカメラ(コンタックスG2など)、サブカメラとして使っている方おります。
でも、いるのですよ~。かたくなに「おれはデジカメなんか持たんぞィ」とおっしゃっているおっさんが近くに。
私が子供の頃からずっと見て親しんできた、スマートなレンジファインダカメラ。大きな一眼レフでなくて、ミラーが無く見やすいファインダーのカメラ。このようなものその物がデジタルになればと思う事ありますね。これ太田原の望みです。でもこれに近いカメラ、手ごろな価格で出てきてますね。

私のおとーさんが持っていた往年の名機ライカIIIf35mmフィルムフォーカルプレンシャッタースチルカメラの基礎を造ったカメラ。僕より2才年上です。
巻上げは摘み回し、低、高速二つに分けられたシャッターダイアル、パララックスの補正も無く、ピント合わせ専用の連動距離計と、レイアウト用に分けられたファインダ、のどかな物ですが、これ持ち味が良いのですよねぇ。
ちなみに最近の若いプロカメラマンに持たせたら、持ち方が分からなかったという結果でありました。

僕の大好きなNikonS3。最近この復刻版が2000年に続き再度ブラックボディで限定販売されました。昔の図面から忠実に再現したんだって。1950年代の名機カメラマニアにはうれしい限りです。

大いに脱線、ですが、たまには昔のことも振り返りましょうよ。ね~皆さん

事のついでだから、よそ見もしちゃおう。
プロとアマ機の差、こんな内容を述べている最中なんですが、某雑誌の先月月号には 同じような内容が特集で載ってましたね。
印刷された写真を見ると、コンシューマ向けはちょっと見きれいで、どちらかというと、プロ機より絵柄のインパクトが強く、私の会社の画像処理の社員にどちらが良いか聞いても、コンシューマ機を指差しました。でも個人的意見ではプロ機の方がディテールが繊細で模写も忠実、本当の色はこんな渋い色だろうな。でも修整すれば、好みに応じた絵柄になりそうな気がしました。絵柄の持っているポテンシャルとしては奥が深いというところでしょうか。

今回はよそ見したまま終了といたしとう存じます。
脱線、よそ見、はたまた、デジタルカメラとはちょっと遠い古いお話になったことここに深く反省いたすと共に、次回へのデジカメ読本への新たなる内容
大いにがんばりたく思う所存であります。