第5回 デジタルカメラのカラー表現

さてさて、今回は前回のCCDを取り巻くレンズその他のお話に引き続き、これにもう少し色を付け加えまして、まさしく
『カメラのカラー表現ってなんじゃぁ!』へと続くのであります。

[まずは色とはなんぞや]から
1図

自然界の白色光はいろいろな色(可視光内で波長430nm~780nmなんだって)が混じって白い光線になっています。

ところで光は色によりその光の周波数がそれぞれ決まっておりまして、波長が短ければ青紫側、長ければ赤い光となります。

さて、1図のように太陽の光をプリズムを通す虹色になるのをご覧になった方もいるかと思います。まあ7色の虹などと言いますが、この中のある波長が光量が強くなったり弱くなったりするそのバランスで、人の目は色を感じる訳ですね。2図は白い光がそれぞれの物体に当り反射した光の波長の強さにより、その物体の色が分かるという例です。例えば黄色いタイルに光が当ると、ブルーの波長の光をそのタイルは吸収しレッドとグリーンの波長光を反射します。これを合わせると黄色に見えるのです。これらは光の3原色のという理論で説明されています。
三原色のカラー表現にはレッド、グリーン、ブルー(R,G,B)を加えると白くなる加色混合法と藍=シアン、紅=マゼンダ、黄=イエロー(C,M,Y)で表現しこれを合わせると黒になる減色混合の二種類が有ります。3図参照。

2図
2-A図

3図

加色混合
3色の光が重なったところが白くなる

減色混合
3色のインキが白紙に重なった所が黒くなる
レッド、グリーン、ブルー(RGB)の3色の原理を応用したものにカラーモニタがあります。モニタをルーペで見ますと(R,G,B)の光の粒子が発光していることが分かります。2-A図。
一方、藍=シアン、紅=マゼンダ、黄=イエロー(CMY)の減色混合は、インキや絵の具に光が当ると思って下さい。光の一部が吸収、反射してで表現します。これには印刷物やD.P.Eでのカラープリントなどが上げられます。但し、一般の印刷物は3色のインキ重ねても黒にはならないので、これに墨(Blackインキ)を入れてシャドー側(写真の暗い方)をしめます。
さて色を表現するには、被写体の色の成分を光の3原色に分解する必要があります。そして3原色別々に記録され、3色バランスを忠実に再現する事により、被写体を模写する事ができるのです。3原色に分解する為には、色のついたフィルターを利用します。これはアナログであろうがデジタルであろうが同じで、テレビカメラにも、フィルムの感光面内にもフィルタに相当するものがちゃんと有ります。デジタルカメラのCCDにも、もちろんフィルタが備わっています。
【CCDのカラー表現】

デジタルカメラの撮像部には、CCDなどの受光素子が使われている事は以前述べました。さて被写体からレンズを通ってきた色気づいた光。あ~、じゃない色のついた光(失礼)をそれぞれの成分(チャンネル)に分解する為にはフィルターという物を通して3色の成分にわけます。このフィルターですが、これはカメラの構造により場所がだいぶ異なります。これによりカメラのタイプが別れるのです。

《デジタルカメラの種類》

一般的ではないのですが、デジタルカメラの短い歴史の中で、広い範囲で種類を分けますと、
●ワンショットカメラ……1回のシャッターで撮影できる。(プロ、アマ問わず一般向け)
●マルチショットカメラ……複数回のシャッターで撮影(プロ用、静物専門、どうしても人物を撮りたい方、動いちゃダメだよ、ぐっと我慢のモデルさんですな。)

スキャンタイプデジカメ

●スキャンタイプカメラ……一定時間の露出で撮影
(プロ用、静物のみ。まさしく被写体をスキャンニングする。時間をかけて撮影、というか入力)
最近はプロ用の1500万画素クラスのカメラでもワンショットが殆どです。更にワンショットでも、下のような構造上のタイプが有ります。

最近はプロ用の1500万画素クラスのカメラでもワンショットが殆どです。更にワンショットでも、下のような構造上のタイプが有ります。

1)3CCDタイプ
4図
4図の様に贅沢にもCCDを3個持っており、それぞれのCCD面に赤緑青(RGB)フィルタがあり、これにより3チャンネルバンドに入力される。
2)単版CCDタイプ
5図
最も一般的なもので、1CCDである。フィルタはCCDにオンチップされており小さな素子一つ一つそれぞれにフィルタが装着されている。CCDの断面図は7図の様になっている。
[CCDのフィルタ]

単版タイプのCCDにもちゃんと3色のフィルタが付いている訳ですが、それには6図の様にセルというセンサー一つ一つにフィルタがかかっているのです。
CCDフィルタにはRGB色の原色フィルタタイプとCMYG色の補色フィルタタイプが有ります。前者は発色の再現性にすぐれているためプロ用一眼レフなど大きなサイズの物に、後者は感度に優れている為、1画素サイズの小さなコンシューマ機に使用されるケースが多いようです。

6図
/////????CCDにどうやってフィルタが付いているの?????//////

さてこのフィルタは小さな小さなセンサーひとつひとつに付いている訳ですが、どうなって付いているのでしょうか。

7図

7図を御覧ください。デジタルカメラの受光素子の拡大断面図です。下の方にあるのがCCDやCMOSなど光を捕らえるセンサー、そうさぁ。で、その前に見えますのがかの有名なマイクロレンズでございます。(有名じゃないか)

どうです、ただ単純に光がセンサーにあたっている訳じゃ無いのですね。ちゃんとレンズという光学的な方法で集光させているのです。これらは受光素子と一体化されており、上部レンズとセンサーに近い方のレンズが有りその中に各色のフィルターが組込まれているのです。これらすべてミクロン単位の工作なのです。凄いですねェ。これってヒゲはやした古時計屋さんみたいな人が、眼鏡かけてピンセットでフィルタに色なんか塗っているのでしょうかねェ。

ん?……… シラケー ごめんなさい。

(前回もこんなことで感心していた太田原でした)

まあともかく、この断面図を見ると第4回のテレセントリック性のところで述べました様に、センサーへの侵入光はできるだけ面に対し垂直の方が良いことが分かりますね。

CCDカメラの色処理は
さて6図を見て頂きたいと思いますが、単版CCDタイプのワンショットカメラでは、それぞれの素子にフィルタにより色が付けられており、ある部分はブルー、そのとなりはグリーンなどとなっています。実はこの方式ですと、ブルーの部分にはレッドフィルタの色の成分は記録されない事になります。つまりRGB各チャンネルでの記録データは面積的に欠如している事になるのです。そこでこの無い部分を周辺の情報から計算して補う処理をしているのです。これを補間というのですが、もちろんこの為の処理をカメラ内で瞬時に行ないます。
でもやはり品質的には細かな柄などは補間でききれずに、虹色の縞模様が出てきたりする事も有ります。3ショットカメラでは各色すべてのセンサーを使用しますので、画質的には有利です。


赤枠部分の拡大

生地の模様の細かなところで色が部分的にはみ出ているのが分かりますでしょうか。
細かな模様の部分を3色で再現しきれず、偽色モアレのでてしまった例。
もちろん後処理でこれを消すことは可能です。1ショット単版式のわずらわしいところです。
今でもモアレには3ショットタイプが、有利といわれています。

じゃ~ん。一大事!全く新しい新方式(だぶっている)センサーをつけたカメラがでたぁ!
今年の秋、これは従来の撮像素子と全く違う方式で、解像度、偽色などに対し実にすばらしい画質を持った、レンズ交換式の一眼レフがフォトキナで発表されました。その名は”シグマ”の「SD9」。”なんだレンズメーカじゃないか”と思う方もいらっしゃると思いますが、シグマという名前は国内より海外で知れています。(昔のミランダみたい)もちろんデジカメ作るのは初めてです。このカメラ、「ファピオンX3」というCMOSセンサーをつけている事が最大の注目点です。従来ですと、一つ一つのセルは別々のRGB情報を受け取るので、結果的にセルサイズ一点には全情報でなく欠如している事は述べましたが、8図に有るように「ファピオンX3」ではRGBの波長の違いにより、異なる受光層(フォトデテクター)で各チャンネルを読み取る様です。結果的にデータの欠如していない、一定面積に対し各RGBのそろった画像データを作る事ができるのです。なんでもシリコンの性質を利用しているのですって。
これって画質にもろ影響するのですよ。実機は一度触った事が有るのですが、残念ながら画像は見ていません。でも驚く程画質は好いらしく、偽色モアレも皆無、354万画素でありながら、600万画素カメラより良いそうです。価格だって本体のみで20万円、しかもRAWデータの現像処理ソフトが付いての金額だから、とても親切。これからシステムをそろえようとする人には、うれしい製品だと思います。

8図
【デジタルカメラの現像処理】

「デジタルカメラで“ゲ・ン・ゾ・ウ”だと、なんだそりゃ!」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、プロ用のカメラでは化学的現像では有りませんが、ちょうどフィルムの現像の様なデータ処理を行なっているケースが多いのです。
先ほどカメラ内で補間処理を行なっていると言いましたが、一眼レフのプロ使用の場合では、報道関係を除き補間処理をカメラではなく、パソコン側で行なうケースが多いのです。カメラからのCCDでの読取りデータをRAWデータと呼びます。このCCDからの撮影生データは画像としては特殊で、一般の画像ソフトでは見る事ができません。これを一般コンピュータのアプリケーションで見れるようなフォーマットにしたり、圧縮かけたりをパソコン側に専用アプリケーションを持たせて行なうのです。
この処理は、撮影後でもホワイトバランスやトーン、露出(絞り+-1.5位まで)の補整をある程度かけられる事と、品質的に高い画像を出力できるので、例えパソコン側での処理に時間がかかっても、プロの場合ではこの方法を使っているケースが多いようです。
コンシューマ機では、安いカメラにそんな面倒な事させたら、誰も買わなくなってしまいますから、カメラで撮影された後は、圧縮のかかったそのままで、パソコンで見れるようなフォーマットにして出力してくれます。

現像処理を行うソフトニコンキャプチャーの画面

撮影データのホワイトバランス、露出、グレーバランス、トーン補正、シャープネス(輪郭強調)などの項目をカメラを離れて、ある程度の修整が可能です。

ここで吐き出されて撮影画像は、他のアプリケーションで見れるフォーマットになります。また出力するカラー領域も指定できます。

【デジタルカメラでの色再現】

私がデジタルカメラのカラーCCDの構造を聞いた時、あの小さなミクロン単位の素子ひとつずつに色の違うフィルタがついている、と知って大変驚きました。さらにその前にレンズまで付いているのですから、その工作技術というものは人間業じゃないな、いったいどうやって製作しているのだろうと今でも疑問なのです。そう思いませんか。
ところで最近のデジタルカメラは本当に色再現が良くなってきました。これは単純にあるメーカーが作ったCCDの性能が良くなったからだけにとどまらず、光の色をデジタルデータに変換後のソフトの処理による物も大きいと思います。
かつてカラーフィルムにしてもその歴史の中で人の目によく見える特性を模索して現在まできた訳ですから、これから考えると驚くべき進歩ではないでしょうか。

さて今回も御覧いただき有り難うございました。
最近、このホームページはデジタルカメラの構造とか、種類とか一般ユーザーにとってはマニアチック過ぎるとも思いましたが、次回はこんな内容をお話したいと思います。
よいとこだらけを載せているデジタルカメラ、でも実は使用上こんな不満、欠点も有るのです。
『デジカメってこんなもの、使うの嫌になる、デジカメのくら~いお話』
あえてこんなテーマでお送りしたいと思います。ぜひ御覧になって下さいまし。